お断わり
このページは、あるウェブページで公開されていた内容を保管目的で提供することにあります。しかしながら、著作権者から要請があった場合は速やかにページを削除いたします。
出典
- 元URL: http://www.fullcast.co.jp/cv/interview_02_03.html(リンク切れ)
- 情報参照元: WebArchiveによる保管済みウェブページ
CAST VOICE 第二声:「自分にしかできないことを。」(2006年)
小学5年の時にアメリカへ短期留学。英語が喋べれず、殻に閉じこもっていたKOKIAさんを、音楽が救ってくれた。それから、音楽は世界の共通語と信じるようになったそうです。
KOKIA: 笑って聞こえるかもしれないけど、ほんとうにそう思ってるんですよねぇ。今はインターネットでみんなとつながり合えるじゃないですか。外国の方からもいっぱいファンメールを貰うんですよ。私という存在をね、楽曲を通して知ってくれて、日本語で歌ってるものを聴いて何か感じて、遠くフランスからメールを送ってくれる人がいる。音楽ってすごいなと思います。
— アメリカでの出来事があって、音楽の道へ。
そのへんもね、はっきりしないんですけど。中学から高校までエスカレーターの学校に行ってたんですね。で、このまま行ったら、やりたいこと何もできないと思ったんですよ。やりたいことが何かは、はっきりわからなかったんだけど、ここにいちゃいけないと。その時、手っとり早かったのが、たまたまクラシックの音楽学校だったんです。
— わざわざ受験したんですよね?
落ちても戻ってこれないと言われたんです。でも、どうにかなるさ精神なんで、わりと。受かってよかった。
— 高校の専攻は…
オペラです。声楽ですね。
— オペラしかやらない?
オペラ科はオペラで。副科で全員ピアノやりますね。
— 大学は、高校とおなじ系列の大学へ。
受験がありましたけど、同じ大学です。
— そして大学在学中にデビュー。その理由は?
理由はいっぱいありますけど、簡単に言っちゃうと、「自分にしかできないことをしたいな」と思っただけです。オペラみたいに、イタリア語でフランス語でドイツ語で勉強して一生懸命歌う。みんな同じ曲を歌う。でも、私は曲も書くから、私が唄う歌って、私の言葉で、私の表現で、私にしかできないじゃないですか。みんな誰しも、自分でなければいけない理由、存在理由を大事にする。オペラを歌うよりも自分で書いた曲を歌う方が、自分にとって意味があると、すごく思ったんですよねぇ。
–その時は、そう思ったと。
例えば、40歳になった時、私がそう考えるかといったら、違うかもしれないですけど。
— 曲は昔から書いているんですか。
まぁ、ピアノ弾いて歌ってたいう意味では、幼稚園の頃からやってましたね。母が今でもよく言うのが、まだ字が読めない頃に絵本を持ってきて、ピアノのところに立てて、「この絵からなる音楽だよ」とピアノを弾いてたらしいんです。小学校の頃には勝手に曲創って歌ってました。休み時間のたびに。
— 自然と出てくる。創ろうと思ったわけじゃなく…
じゃないですね。表現方法ですね。例えばダンスで表現する人がいるけど、私は歌に託して、音楽に託して…いろんなものをやってたかなぁ。
— 曲創りのようなことをずっとしていて、大学の時に世の中へ出したいと思った。
というか、まわりがデモテープ作ってみれば?と言ってくれて。協力してくれる人もいて。作っているうちに、じゃあ実際デビューするか、みたいな感じで。思ったのは、やっぱり自分にしかできないことなんだな、と。それが一つの決定打になりましたね。
— 音楽を続けることに、挫折じゃないですけど、嫌になったりしなかった?
仕事にする前はないですよね。だって自分の好きな唄、歌って…でも、デビューした日から今日までは、死ぬほどあります。
— やはり、創作活動に専念したいですよね。
じゃないです。ただ歌っているだけじゃなくて、いろんな面を持ち合わせてるから。なんか、こう、悩むことはいっぱいありますよねぇ…。
— 売らなきゃいけないとか。気になります?
あまりにも簡単な言い方をするとよくないかもしれないけど、気になる気にならないじゃなくて、KOKIAっていうもの自体がもう、自分の名前だけど自分じゃない。スタッフがいて、みんなで歩いている。私ひとりの考えでは、私が唄いたい曲を歌っただけでは、成立しない仕事なんで。だからそこには、理解しあうこととか、コミュニケーションを交わすこととか、我慢も必要だし。そういうもの全部かみ砕いて詰めたものがKOKIAなんですよねぇ。
— デビューしてから徐々にそう思うように?
もちろん。だって、デビューした時は右も左もわからない。どうやってレコーディングするかもわからない。ディレクター・プロデューサー・マネージャー、レコード会社の人・事務所の人たちが、どう私と関係持っていくのかさえわからない。だから、単純にミュージシャンとして悩むというより、社会人デビューですよね、まずは。
— 社会人として学ぶべきことがたくさんあった。
特殊な仕事ではあるけど、現場でどう振舞うか、どう人と付き合っていくか。だんだん、そういうことも少しわかるようになって、やっと音楽の話ができましたね。そうして年を重ねて、まだまだ勉強中です。
「ときどきギャー!となる(笑)。」
— 要するに、作曲以外の部分を学んだと。
作詞作曲についても、求められるものは、時代やスタッフが変わるとともに変っていくので。自分で曲が書けても、そういう曲は嫌だというスタッフもいるし、こういうものを書いてくださいというリクエストもあるし。自分はこうがいいけど、タイアップのイメージがあるから、こうしてくれということは、言うなれば、赤い家を描きたいのに、青い家にしろって上から言われるようなものじゃないですか。
— そうですね。
それってすごく、クリエイターにとって屈辱なんですよ。でも、それを屈辱ととるか、まぁ…納得できるのであれば、自分へのステップととるのか。考え方次第ですよねぇ。思考回路をバリエーション持って、納得しながら仕事をする。そんなことをちょっとずつ学んでるかなぁ…。成長してるかなぁ。
— でも純粋にアーティストの部分はどうなるんですか。やめろー!みたいになりません?
なりますよ。ギャーってなるから。だから精神的健康状態を保つために、自分の書きたい歌も書くんですよね。この前、それを小さいライブハウスで勝手に歌ったりしたんですけど。自分へのご褒美にね。
— 売れる、売れないは関係のないところで…
売れる、売れないは、歌いたいものがあるとか、伝えたいものがあるというアーティストの気持ちとは全く関係ないので。たとえば10年後に、ちょっと今書きためてる自分の宝物をリリースしてもいいじゃないですか。
— うまくバランスを保てないこともありますか?
ありますね。シーソーだから、どっちかが重くなっちゃうときもある。でも、どうにか。がんばって。
どんなに才能がある人でも世の中とバランスをとるためにがんばっている。そんな話を聞くと、こちらもちょっと勇気がわいてきますよね。そしてKOKIAさんの口調もだんだんと熱を帯びてきました。(第三声へ、つづきます!)