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出典
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Nice to meet you 〜 written by 川嶋あい 〜 Vol. 2(2011年5月17日)
シンガーソングライター、川嶋あいが注目のアーティストに突撃取材! 第2回となる今回は特殊な録音手法に挑戦した新アルバム「moment」を発表するKOKIAがお相手。共に作詞・作曲を手掛ける女性歌手の2人、どんな話に花が咲くのでしょうか? 乞うご期待!
川嶋あい(以下、川嶋)「今日はよろしくお願いします。まず軽めの話題からお話ししましょうか。いまお仕事以外でいちばん興味のあることってなんですか?」
KOKIA「いまはアロマセラピーに興味がありますね。芳香療法。ゆくゆくは資格も取ろうと思っていて。わたしたちミュージシャンって目に見えない部分にアプローチする仕事じゃないですか。目に見えないけれども脳や心に働きかけるという意味では音楽と共通する所があるんじゃないかなと思ってはじめたんです。今日も自分でブレンドしたアロマオイルを持ってきてるんですけど」
川嶋「すごい!」
(しばらくアロマセラピーの歴史や詳細なしくみの話を)
川嶋「聞き込んじゃいましたね、アロマの話。もうアロマセラピー講座みたいになっちゃった(笑)」
KOKIA「でもアロマって奥が深くって、最終的には解剖生理学とか脳の分野まで勉強をするんです。だから一般的なアロマのイメージ……女の子が好きそうとか、いい香りを嗅ぐというやわらかい印象のものだけとは微妙に違うんですよね。アロマセラピストの資格を取ったら自分のコンサートでもアロマを焚きながら演奏してみたいなって思っているんですよ。」
川嶋「素敵! 普段、家でアロマを焚きながら音楽とかも聴きますか?」
KOKIA「いや、それが家であんまり音楽をなかなか聴かないんですよ、わたし。普段音をたくさん聴く仕事をしているので、私生活ではなるべく音のない状況でいたいのかなぁ。テレビもあまり見ないし。テレビ番組特有の独特のテンションが苦手で。あとはなにかしながら、というのができないんですよね。音楽を聴きながら、テレビを見ながら、っていうのがダメなんです。」
川嶋「なるほど。でもすこしわかる気がしますね。やっぱりなにかをしながらって集中できないですもんね。じゃあ、そろそろ本題に移りましょうか。今回のKOKIAさんの新作アルバム『moment』について伺おうと思います。すごくびっくりしたのが、今回のアルバムって全編ステージ・レコーディングなんですよね。こういった試みに挑戦するきっかけは?」
KOKIA「今年でわたし事務所を独立して5周年なんですね。事務所の独立ってわたしにとっては、とても大きな節目でした。だからこの5年間は一瞬一瞬がすごく尊かったと思える期間なんですけど、そんな節目にふさわしい、特別なアルバムを作りたかったんです。そこからKOKIAらしいアルバムはどんな作品だろうって考えて。ここ数年、私が強く感じているのは、もちろんCDという形で作品を残すのも大切だと思うのだけど、わたしにとってステージはそれよりももっと大事にしていきたい場所だなって改めて思っていて。じゃあ、そのステージにおける瞬間の音楽をCDという作品に封じ込めよう、という思いがステージレコーディングという形式でアルバムを作ることになったきっかけですね」
川嶋「ステージ・レコーディングはどのように進めていったんですか?」
KOKIA「今回のレコーディングは、いわゆるライブ・アルバムとは違うんです。レコーディングをする様子をお客さんに見てもらうというイメージの方が近いかもしれません。だからコンサートホールのステージ上でヘッドフォンをして、バンドが円形のフォーメーションを組んで演奏をしました。客席の最前列には通常スタジオにあるようなモニター席を再現してもらって、エンジニアの方にスタンバイしてもらって、録音を進めてゆくという形でした。通しで演奏したら客席に再現されたモニター席でお客さん達と一緒になってチェックをする。とにかく一発録り=同録にこだわって作られたアルバムなんです。」
川嶋「その緊張感はきっと大変なものですよね」
KOKIA「えぇ、いままでで経験したことのない緊張感を味わいましたね。もちろん集中もしなきゃいけないし。だから終わった後に感じたのは肉体的な疲労に加えて、精神的な疲れ(笑)。ミュージシャンってアスリート的な要素の多い職業だなって改めて思いました。」
川嶋「アルバム収録曲はすべて今回のために書き下ろした曲ばかりですか?」
KOKIA「そうです。ほぼ今年に入って3ヶ月で書いた曲たちですね。」
川嶋「ちなみに曲は夜書くことが多いですか? それとも日中?」
KOKIA「今回はめずらしく昼間に書いた曲もあるんだけど、だいたいは夜に書きますね。マジックアワーから夜にかけて」
川嶋「わたしも夜じゃないと書けないんですよ。深夜12時から2時くらいっていろいろ悩んだりする時間帯なんですけど、そのタイミングで曲を書くんです。では今回のアルバムでいちばん伝えたかったメッセージは?」
KOKIA「『moment』というタイトルが表してるように、”瞬間”っというものを表現したかったんです。決して留めることのできない瞬間的なものに人は突き動かされたり、惹かれたりするんじゃないかなって思うんですよ。タイトル曲の歌詞で”過去と未来は手をつないで助けあっている”という部分が気に入ってるんですけど、悲しいことや辛いことを忘れるんではなくて、そんなすべてを受け止める覚悟と準備が未来にはあると思うんです。日々の生活の一瞬一瞬をしっかり受け止めて生きていきたいという想いをこめ、アルバムを作りました。それがレコーディングの手法も相俟って、うまく表現できたかなって思います。」
川嶋「タイトル曲”moment”はわたしも特に印象に残った1曲で。この曲を書いて精神的な変化はありましたか?」
KOKIA「あったと思います。わたしは曲を書き終えるたびに、心の整理がつくんですね。」
川嶋「その感覚、すごくわかります。曲を書くことで自分なりの答えが見つかるというか。」
KOKIA「そういう風に自分のなかで芽生えたものを大切に、その種をステージでお客さんに蒔いていきたいなって」
川嶋「今日は勉強になるお話、たくさん聞けてよかったです。ありがとうございました!」